十津川、山の民

山の民の誇りを持ち、十津川村に生きる人々を紹介します。

Vol.11

2020.05.11

森林のエキスパート「フォレスター」を目指して。

大栄環境グループ 株式会社総合農林 十津川事務所荒木 慎也さん

システムエンジニアから一転、林業の世界に。
前職の知識を生かしながら森林の管理を中心に
十津川村の森林の保全・改善に携わる。

都会暮らしから一転、広大な自然を求めて十津川村へ。

大学時代、地元の広島でコンピューターに関わる学問を専攻していた荒木さん。卒業後は東京や大阪でシステムエンジニアとして活躍されていました。趣味のツーリングで好んで山の中ばかりを訪れるうちに、自分は自然に囲まれて生活するほうが向いているのではないかと思い立ち、林業の世界へ身を置くことを決意。今の会社に転職し、十津川村に配属が決まったのを機に移住されました。実はツーリングで十津川村にも来たことがあったそうで、不思議な縁を感じます。

森林に関わる多様な業務に、ストイックに向き合う日々。

荒木さんは現在、前職の知識を生かしながら、社有林の管理を中心に、十津川村の森林を保全・改善するための取り組みもされています。その仕事内容は実に多岐にわたり、社有林の巡視と作業計画の立案、山林に生えている木や植物の太さ・高さや状態、山林に住む動物の種類などの調査、林業を支援するソフトウェアの導入やアプリケーションの試験、他の地域の山林所有者へのアドバイスなどさまざまな面から林業従事者をサポートしています。1日中ずっと山にいることもあれば事務所で一人ひたすらパソコンに向かうことも。ただ、「同じデスクワークでも、窓から見える景色が都会と全然違うのでリラックスできます。」そう語る表情から、大自然が本当にお好きなのだとわかります。
十津川村でのそうした多様な業務内容がやりがいでもあるという荒木さん。「森林の管理は奥が深くて、木そのものから森全体、土や気象、歴史までさまざまな学問の知識が必要です。ただ、これまで林学について学んでこなかったので、これらの知識を習熟させるのにかなり苦戦しています。最初のうちは山の歩き方もわかりませんでした。しかし森林の現場で必要とされる知識や技術などについて、地域で林業に携わられている方々に教えてもらっていることもあり、今では何とか仕事ができています。手探りの状況の中で自分に何ができるかを考えて実践し、身につけられる今の環境は、大変ですが非常にやりがいがありますし、そうして吸収した知識が仕事に役立つとうれしいです。」

より良い森林づくりに貢献できる「フォレスター」になりたい。

そんな荒木さんが理想とするのは「フォレスター」という生き様。「フォレスター」とは森づくりのコーディネーターを指す職業で、持続可能な森づくりのために自然環境と林業経営の両立を目指し、森林管理だけでなくセミナーや一般向けのワークショップなど幅広い活動を行っている方々のこと。スイスやドイツなどの林業先進国では国家資格となっています。ヨーロッパは優れた技術やマネジメント力を持つだけでなく、環境に対する意識が非常に高いのが林業先進国と呼ばれる所以です。日本がそれらの地域から学べることはまだまだたくさんあることでしょう。
「森林保全は世界の潮流であるSDGsやESGとも大きく関わるもの。そのような仕事に携われることを誇りに思っています。今は目の前の十津川村の森林をフィールドに、村の歴史を守りながらより良い森林、より良い村にするために活動したい。そして十津川村の『フォレスター』として、地域の魅力向上による事業の多様化や観光の活性化、村内の森林の改善、社会的地位や経済性・安全性の向上による林業の発展に貢献していきたいと考えています。」そう力強く語ってくださった荒木さんのさらなるご活躍をお祈りしています。

事務所でお話を伺います。窓から臨む山と川。

前職の経験が生かされる場面。

社有林でのお仕事を拝見します。

調査に欠かせない器具たち。

木と一体になり森の声を聴いているかのよう。

どうしたらより使いやすくなるかを考えながら。

森林を通して十津川村の歴史に思いを馳せます。

「フォレスター」を目指し、今日も頑張ります。