十津川、山の民

山の民の誇りを持ち、十津川村に生きる人々を紹介します。

Vol.8

2018.02.20

「良いものをつくりたい」シンプルな思いがある。

村尾 守さん/陽子さん

夫婦で十津川村に移住した村尾ご夫妻。
守さんは地域おこし協力隊として家具制作に取り組みながら、
独立を目指して技術を磨き上げています。
陽子さんは村の木工・家具ギャラリー「KIRIDAS」でカフェを営業。
十津川村で奮闘するふたりの今を取材しました。

脱サラ、そして十津川村へ移住。念願の家具職人に。

この日の取材場所は、陽子さんがカフェを営業している村の木工・家具ギャラリー「KIRIDAS」。守さんが家具職人として働く村の工房に併設されています。居心地の良い店内で、ゆっくりとお話を聞くことができました。

 

-守さん-「十津川には僕が家具職人になるためにやって来ました。大学でデザインを勉強していていて、当時から家具に興味はあったんですが、卒業後は就職してサラリーマンに。でも独立してものづくりをしたいって気持ちがずっと消えなくて。7年半勤めた会社を辞めて、家具・工芸の学校に通い木工の技術を習得しました。そこで十津川村が家具職人を募集していると聞いたのがきっかけです。」

 

-陽子さん-「移住のことを聞いた時は驚きました。でもいざ来てみたら、なんか楽しそうかも!ってむしろわくわくしました。実際、KIRIDASでお菓子作りをはじめてみたり、地元の常連さんから柿や柚子のおすそ分けをいただいたり、村に来なければ経験できないことがたくさんありました。」

 

-守さん-「村に来てからは、他の職人さんと手分けしながら『TOTSUKAWA LIVING』の家具をつくったり、個人で家具のオーダーを受けたりしています。初めて制作から納品まで一人で担当したテーブルは村のコミュニティセンター(いこら)に置いてもらっています。」

 

穏やかでゆったりとした雰囲気のお二人ですが、行動はアグレッシブ。
 

相棒の旋盤(せんばん)でつくる、木製プレート。

守さんは家具だけでなく、木工作品の制作も行っています。

 

-守さん-「旋盤は回転する木材に刃を当てて、形を削り出す機械なんですが、家具・工芸学校に通っていた時に買ったものを村でも愛用しています。家具とはまた違った楽しさがあって、彫刻みたいな感覚ですね。」

 

木製プレートは日常使いにぴったりなシンプルものから、オブジェのような2段タイプ、たっぷりと厚みのあるものなど様々なフォルムで展開。KIRIDASで販売しています。

 

-陽子さん-「あと、折りたためるスツールも置いてるね。」

 

-守さん-「今はスツールだけですけど、これから『折りたためるシリーズ』で展開できないかとか、ちょっと考えてます。」

 

カラーリングが楽しいスツールは、板とバンドのセット。座る時は組み立ててバンドで固定し、しまう時は折りたたんでバンドで留めておくことができます。遊び心のある作品たちから、守さんが十津川村でのものづくりを心から楽しんでいる様子が伺えます。
 

村の職人だから、村の木を使う。

十津川村はその面積の96%が山。植えられている木の多くは、建材として使われることの多いスギ、ヒノキです。
 

-守さん-「移住を決める前に役場の人とか村の家具職人の人たちにお会いしたんですが、『みんな一生懸命で、なんだかいい人ばっかりだなぁ。この人たちと一緒に仕事がしたい。』と感じて移住を決意したんです。村の林業をもっとよくしていくためにも、自分にできることを考えていきたいです。」

 

-守さん-「僕は十津川村で家具職人になったので、そばにある十津川村の木を使うのは、ごくごく自然な当たり前のこと。スギやヒノキは家具の材料には向いていないと言われることもありますが、スギやヒノキだからこその良さもありますし、出来上がったものが魅力的であれば、お客さんにはきちんと認めてもらえる。村の木を使って良いものをつくれるよう、今はただ一生懸命取り組んでます。」

 

陽子さんは大阪でお花屋さんをしていたので、十津川村でもその経験が活かせたら、なんて考えたりもしているそう。新天地で試行錯誤を続けるふたりの、さらなる活躍が楽しみです。
 

十津川での初仕事。村のコミュニティセンターで使われています。

制作中のオーダー家具の図面。

型に合わせて、板にラインをひきます。

旋盤でプレートを削り出す作業も見せていただきました。

プレートはKIRIDASで展示販売しています。

折りたためるスツール。

おふたりの穏やかな雰囲気にほっこり。

インタビュー後は温かい飲み物をいただきました。