十津川、山の民

山の民の誇りを持ち、十津川村に生きる人々を紹介します。

Vol.4

2017.05.16

ぬくもり伝える、木のものづくり。

木工職人/木刻屋(MokkokuYa)主人坂口 明裕さん

和歌山県田辺市出身の木工職人。十津川村の林業再生のため、
ふるさと復興協力隊として2012年から3年間勤務。
任期満了後独立し、村の加工場を拠点に木工職人として活躍中です。

ものづくりで挑む、十津川村の林業再生。

十津川村に大きな被害をもたらした2011年の紀伊半島大水害。村をあげて復興、林業再生に取り組んでいた十津川村から、村の木を使ったものづくりを担う人材になって欲しいと声がかかりました。「木彫刻師の父親の影響で、私も子どものころから木でものづくりをして遊んでいました。高校卒業後は家を出て修行を積み、村から声がかかった頃には独立して一人で木工職人として活動していました。誰かのため、村のために自分の技術を生かすことができるならばと、ふるさと復興協力隊への応募を決めました。」

ものづくりがつなぐ、人との縁。

十津川村に移住して、坂口さんのものづくりに変化がありました。「移住してから、利用する材料は、村で多く生産されているスギ、ヒノキがメインになりました。昔から日本の家具や道具に広く使われていた木で、日本人の生活に自然となじむ優しさが魅力です。それに、村では人との関わりも随分と増えましたね。材料を調達する十津川村の加工流通センターの方はもちろん顔見知りですし、理想の木材を求めて山の林業現場に出向くこともあります。拠点としている村の加工場も複数の職人が共同で利用していますから、他の職人の仕事を見て良い刺激を受けています。」

丸くなったものづくり。

十津川村の職人たちの他にも、坂口さんのものづくりを刺激する存在が。2016年のはじめに生まれたかわいい女の子です。「子どもが生まれてから、子ども向けの作品も多くつくるようになりました。現在はまだ試作段階ですが、この前は木をくりぬいたカップやお皿を作りました。」見せていただいた試作品はどれも、ぽってりとした丸みに坂口さんのぬくもりや優しさが詰まっているようです。
2017年の4月には、加工場の隣に村の林業の魅力を発信するギャラリーカフェ「KIRIDAS」がオープン。十津川材を利用した家具や、坂口さんをはじめとした加工場で活動する職人たちの作品を手に取ってご覧いただけます。

十津川材のマグカップとスプーン(試作品)

十津川材のお皿(試作品)

村の加工場での一コマ。作業中は真剣そのもの。

取材日は、細く切った木をつなぎ合わせるヘリンボーンを制作中。

つなぎ合わせた板はさらにいくつもの工程を経て、併設ギャラリーのカフェテーブルに。

長年の相棒「のみ」は作品に合わせて使い分けます。